COLUMN

物流DXは何から始める?中小倉庫・出荷現場の課題と進め方5ステップ

出荷現場の小さな改善から始める物流DX

物流データを画面で確認し、倉庫の業務改善を話し合う担当者

物流DXの第一歩は、受注から出荷までの作業を見える化し、負担の大きい工程を一つ選んで改善することです。中小倉庫や発送現場なら、注文情報の転記回数や送り状発行にかかる時間を記録するところから始められます。

最初から倉庫全体のシステムを入れ替える必要はありません。対象の荷主や配送会社を絞り、同じ手順で作業できる仕組みを整えたうえで、効果を確認しながら広げていきましょう。

本記事では、物流DXの基本、2026年施行の物流効率化法に関する確認事項、現場で進める5つのステップを解説します。「何から手をつければよいか」を判断する材料としてお役立てください。

物流DXとは?まず押さえたい定義と「デジタル化」との違い

物流DXを正しく進めるには、まず言葉の意味を正確に理解することが欠かせません。ここでは行政の定義を確認したうえで、混同されやすいデジタル化との違いを整理します。

物流DXの定義(国土交通省・経済産業省)

物流DXとは、機械化とデジタル化を通じて物流のあり方そのものを変革する取り組みです。国土交通省は物流DXを「機械化・デジタル化を通じて物流のこれまでのあり方を変革すること」と定義し、その手段として物流分野の機械化と物流のデジタル化を挙げています。一方で経済産業省はDX全般を、データとデジタル技術で事業や組織を変革し競争上の優位性を確立することだと説明。つまり本質はシステムの導入ではなく、仕事の仕組みそのものを変える点にあるのです。

物流DXと「物流のデジタル化・IT化」は何が違うのか

物流DXと物流のデジタル化は似た言葉ですが、目指す範囲が異なります。デジタル化とは紙の伝票をPDFにしたりFAXの発注をメールに置き換えたりするような、特定業務の部分的な改善を指す言葉です。これに対して物流DXは、配送・倉庫・在庫・荷主の情報をつないだ全体最適を目指します。ただしデジタル化で生まれたデータがなければ全体最適の材料は揃わないため、デジタル化はDXにもつながります。

物流DXが急務となった背景

紙や電話による作業と、タブレットやバーコードを使う倉庫作業の比較

定義を理解したところで、次になぜ今これほど物流DXが注目されているのかを見ていきましょう。

物流の2024年問題

2024年4月から、トラックドライバーの時間外労働に年960時間の上限規制が適用されました。国土交通省が紹介するNX総合研究所の当時の試算では、荷待ち時間の削減などの対策を講じない場合、2019年度の貨物輸送量等との比較で、2024年度には14.2%、2030年度には34.1%の輸送能力が不足する可能性が示されました。これは対策を講じなかった場合の推計であり、2024年度に実際に生じた不足率を示す数字ではありません。そのため荷待ち時間の削減や積載率の向上といった効率化が急務となり、デジタル技術で輸送と倉庫の業務を見直す物流DXが解決策として位置づけられたのです。

物流効率化法:まず押さえたい3つのポイント

物流効率化法では、トラックへの積載効率を高め、荷待ち時間や荷役等時間(積み下ろしなどにかかる時間)を短くする取り組みが求められています。まずは次の3点を押さえましょう。

  • 2025年4月から:対象事業者に努力義務
    荷主・フランチャイズチェーンの本部・物流事業者に、区分に応じた取り組みが求められます。中小企業でも一律に対象外にはなりません。
  • 2026年4月から:一定規模以上の事業者には追加の義務
    「特定事業者」に指定されると、中長期計画の作成・提出や定期報告等が必要です。物流統括管理者(CLO)の選任・届出は、特定荷主と特定連鎖化事業者が対象です。
  • 定期報告は、指定を受けた翌年度から
    制度の施行日と、各社の指定日・提出時期は異なります。自社の区分と指定基準を確認し、必要な手続きを進めます。

根拠:国土交通省の制度概要/定期報告の開始時期

指定基準・算定の注意点・手続きの詳細を見る

物流効率化法(正式名称:物資の流通の効率化に関する法律)の改正による規制的措置は、段階的に施行されています。2025年4月1日からは、荷主・連鎖化事業者(フランチャイズチェーンの本部)・物流事業者に、各区分に応じた物流効率化の努力義務が課されています。取り組みの中心は、積載効率の向上、荷待ち時間の短縮、荷役等時間の短縮です。

2026年4月1日からは、一定規模以上の事業者を「特定事業者」に指定し、中長期計画の作成・提出や定期報告等を求める制度が施行されました。施行日と、各社が指定を受ける日や報告を提出する日は同じではありません。

  • 中長期計画:各特定事業者が判断基準に基づく措置の計画を作成・提出します。毎年度の提出を基本としつつ、内容に変更がなければ5年に一度の提出となります。
  • 定期報告:指定を受けた翌年度以降、毎年度、取り組み状況等を報告します。例えば2026年度に指定を受けた場合、定期報告は2027年度からとなります。
  • 物流統括管理者(CLO):特定荷主と特定連鎖化事業者に選任・届出の義務があります。重要な経営判断に参画する管理的地位にある者を選任する必要があり、単に現場の担当者を置くこととは異なります。

根拠:国土交通省の制度概要/中長期計画/定期報告/CLOの選任

特定事業者の指定基準と、中小企業が確認すべきこと

特定事業者の指定基準(区分ごとに判定)
区分指定基準集計上の注意
特定第一種荷主・特定第二種荷主・特定連鎖化事業者各区分の年度の取扱貨物重量が9万トン以上区分ごとの立場・対象貨物に基づいて算定。会社全体の入出荷重量の単純合計では判定しません。
特定貨物自動車運送事業者等年度末に保有する事業用自動車が150台以上対象となる事業・車両の範囲を公式の手引きで確認します。
特定倉庫業者年度の貨物保管量が70万トン以上寄託を受けた物品を保管する倉庫に入庫した貨物の年度内の合計重量。ある時点の在庫重量ではありません。

基準以上の場合は、指定に係る届出が必要です。指定基準を下回る場合も、法の対象となる事業者には区分に応じた努力義務が適用されます。「中小企業だから対象外」「特定事業者でなければ取り組み不要」とは判断できません。

根拠・算定方法・区分別手引き:国土交通省「特定事業者の指定」

自社の区分・手続き・現場の取り組みを確認する手順

  1. 事業者区分を確認する:第一種荷主(運送契約を結んで委託する事業者)は自らの事業に関して継続して運送契約を締結し、運送を委託する者、第二種荷主(貨物の受渡しを行う事業者等)は自らの事業に関して他の事業者が雇用する運転者から貨物を受け取る、又は引き渡す者等です。単に「送る側・受け取る側」で区分しません。連鎖化事業者、貨物自動車運送事業者等、倉庫業者なども含め、該当区分を確認します。複数に該当する場合は区分ごとに確認します。
  2. 区分別の算定方法で集計する:前年度の取扱貨物重量・入庫重量や年度末の事業用自動車台数を確認します。第二種荷主の重量算定では、自ら運送を委託する貨物や受渡しの日時等を運転者に指示できない貨物などの除外条件も確認します。
  3. 届出・指定後の対応を管理する:公式の区分別手引きで提出先と期限を確認し、届出、中長期計画、定期報告、対象者のCLO選任・届出を管理します。届出等は原則オンラインのため、GビズIDと担当体制も準備します。
  4. 実際の物流改善を進める:該当区分の判断基準に沿って、取引先と出荷予定や荷待ち・荷役等時間を共有し、積載効率の向上や時間短縮に取り組みます。

荷主区分の考え方:第一種荷主・第二種荷主の定義

人手不足・高齢化・EC拡大による小口多頻度化

倉庫作業員や事務スタッフの採用は難しくなり、ベテラン社員の高齢化で技能の継承が課題となっています。一方でEC市場の拡大により、出荷は大口から小口へ変化してきました。件数が増え続けるため送り状の発行や梱包の作業が膨らむ一方であり、少ない人員で対応するには手作業をシステムに置き換える発想が求められます。

物流コスト高騰と脱炭素への対応

燃料費や人件費の上昇により、物流コストは高止まりが続いています。加えて脱炭素の流れから、CO2排出量の削減も経営課題となりました。積載率を上げてトラックの台数を減らすにはデータの把握が土台となるため、ここでも物流DXが鍵を握ります。

物流業界が抱える5つの課題とDXで解決できること

自社の困りごとに近い行から、改善対象と効果の測り方を確認してください。システムの導入だけで改善が完了するわけではなく、入力・確認・例外対応の手順もそろえる必要があります。

現場の課題・改善方法・確認する指標
現場の課題改善方法の例確認する指標
紙・FAX・電話への依存受注・出荷指示をデータで共有し、確認手順を統一する転記回数、確認にかかる時間
在庫・出荷状況が見えない入出庫を記録し、バーコード照合と進捗共有を行う在庫差異、誤出荷率
送り状発行の繰り返し作業受注データを取り込み、住所確認・印刷・再発行の手順を整える1件あたりの処理時間、修正件数
荷待ち・積載効率の低さバース予約で到着時間を調整し、配車計画を見直す荷待ち時間、積載率
荷主・倉庫・運送会社の情報分断共有する項目と更新時点を決め、EDI・APIなどで連携する照会件数、連携エラー件数

物流DXを推進する4つのメリット

物流DXによる業務効率化・コスト削減・情報連携のイメージ

導入後は「便利になった」という感想だけでなく、次の4点を導入前の記録と比較しましょう。効果は業務内容や運用によって異なります。

1. 同じ人数で対応できる出荷量が増える

定型作業の時間を減らすと、確認や例外対応に人員を回しやすくなります。出荷件数と残業時間を合わせて確認し、現場の負担が減ったかを判断します。

2. 出荷品質が安定する

誤出荷率に加え、修正や再発送、問い合わせ対応にかかった時間も記録します。通常の出荷だけでなく、住所不備や注文変更への対応が安定したかも確認しましょう。

3. 費用対効果を判断できる

削減できた作業時間や再発送費と、月額料金・機器費・連携費・教育時間を比較します。作業時間の短縮が、そのまま支出の削減になるとは限らないため、余力をどの業務に使えたかも評価します。

4. 取引先への改善提案に使える

出荷実績や時間帯ごとの作業量を共有できれば、荷主と締め時間を調整したり、運送会社と集荷時間を相談したりする材料になります。記録を現場内の改善から取引先との調整へつなげましょう。

物流DXの進め方を5ステップで解説

DXにはさまざまな方法がありますが、すべてを一度に導入する必要はありません。順序を守って段階的に進めることが成功の条件です。

STEP 1. 現状業務の棚卸しとボトルネックの特定

最初に行うべきは、受注から出荷までの業務を一つずつ書き出す棚卸しです。誰がどの作業にどれだけの時間をかけているかを整理すると、手作業が集中する工程や特定の人に依存している業務が見えてきます。例えば送り状発行なら、注文情報の転記、住所確認、印刷、貼付までの時間と修正件数を、通常日と繁忙日に分けて記録します。

STEP 2. 目的とKPIを決める(出荷リードタイム・誤出荷率・残業時間など)

次に物流DXで何を達成したいのかを、数値目標として設定します。代表的な指標は出荷リードタイムや誤出荷率のほか、月間の残業時間や1件あたりの出荷処理時間などが挙げられます。

STEP 3. 小さく始める領域を選ぶ

目標が決まったら、最初に手をつける領域を1つに絞りましょう。例えば、特定の荷主・配送会社の送り状発行を対象に、受注データの取り込みと住所の確認手順を標準化します。対象を限定すれば、日々の出荷を続けながら問題点を確認しやすくなります。

STEP 4. 現場に合うシステムを選び、運用を定着させる

領域が決まったら、既存の受注管理システムとの連携、プリンターやハンディ端末への対応、現場の通信環境を確認して製品を選びます。クラウド型は自社サーバーの管理負担を抑えやすい選択肢ですが、初期設定・連携開発・機器・月額料金を含む総費用で比較しましょう。実際に使う担当者が試し、手順書と問い合わせ先を用意します。並行運用を行う場合は二重発行を防ぐ担当・対象範囲・終了条件も決めておきます。

STEP 5. データを蓄積し、倉庫全体・輸配送へ展開する

導入後は、1件あたりの処理時間や修正件数を、導入前と同じ作業範囲・集計方法で比較します。出荷件数や繁忙期の違いも確認し、効果が出たら、データを次の改善に活かします。出荷データが揃えば在庫管理の精度向上に進みやすく、在庫が見えれば配送計画の最適化にも手を広げられるはずです。

物流DXでよくある失敗パターンと回避策

ここでは中小企業で特に起こりやすい4つの失敗パターンと、その回避策を整理しておきます。

ツール導入が目的化し、業務が変わらない

まず挙げられる失敗が、システムを導入すること自体が目的になってしまうケースです。避けるにはKPIを定期的に確認し、動かなければ運用を見直しましょう。

現場の反発で使われないシステムになる

経営層が決めたシステムを現場に押しつけると、使いにくさへの不満などから反発が生まれやすくなります。回避策は、製品を比較して選定する段階から実際に操作する現場の担当者を巻き込んでおくことです。

最初から大規模投資をして回収できない

補助金や勢いに後押しされて、いきなり大規模なWMSや自動化設備を導入するのも危険です。業務量に見合わない投資は、資金繰りを圧迫しかねません。送り状発行のような小さな領域から始め、効果を確認しながら投資を広げる段階的な進め方が安全です。

荷主・配送会社との連携を考えずに自社だけで完結させる

自社内の効率化だけを考えてシステムを選ぶと、荷主や配送会社とのデータ連携ができず転記作業が残ってしまいます。導入前に主要な取引先が使うシステムやデータ形式を確認し、連携できる製品を選ぶことが大切です。

物流DXに関するよくある質問

物流データを見ながら疑問点を話し合う担当者

最後に、物流DXについて中小企業の経営者や現場責任者から寄せられることの多い質問にお答えします。

物流DXは中小企業でも取り組めますか?

はい、十分に取り組めます。クラウド型システムの普及により、大規模な初期投資をしなくても始められる環境が整いました。

物流DXとロジスティクスDX・サプライチェーンDXの違いは?

対象とする範囲の広さが異なります。物流DXは輸送や保管といった物流業務そのものの変革を指し、ロジスティクスDXは調達から販売までの物の流れ全体の最適化を含む言葉です。さらにサプライチェーンDXは、取引先や消費者まで含めた供給網全体をデータで結ぶ概念として使われます。

物流DXは何から始めるべきですか?

効果を測りやすい業務から始めるのが基本です。多くの中小倉庫では、送り状発行や出荷指示の見直しがこれに該当するでしょう。投資が小さく、成果も数字で見えるからです。

WMSを導入しないと物流DXはできませんか?

いいえ、WMSは必須ではありません。物流DXの本質は業務のあり方を変えることであり、送り状発行システムやハンディターミナルの導入だけでも立派な一歩だといえます。在庫精度、商品数、荷主ごとの管理要件、既存システムとの連携を踏まえ、WMSの導入が必要か、いつ導入するかを判断しましょう。

改正物流効率化法で中小企業がやるべきことは?

まず自社が法律上のどの事業者区分に該当するかを確認し、区分に応じた努力義務と判断基準を確認します。そのうえで指定基準を満たすかを集計し、必要な届出を行います。指定後は中長期計画や、指定の翌年度以降の定期報告等に対応します。CLOの選任・届出は特定荷主と特定連鎖化事業者が対象です。中小企業であっても一律に対象外とはならず、送り状発行システムの導入だけで対応が完了するわけでもありません。

物流DXは「出荷現場の小さな標準化」から始めよう

物流DXの第一歩は、現場の作業を見える化し、負担の大きい工程を一つ選ぶことです。自社に必要な制度上の対応を確認しながら、作業時間や修正件数を記録し、改善の効果を確かめていきましょう。

例えば、注文情報を送り状ソフトへ何度も入力している、配送会社ごとに画面を切り替えている、追跡番号を受注管理システムへ転記している。こうした作業が毎日の負担になっているなら、送り状発行と受注データの連携が見直しの候補になります。

送り状発行の見直しから始めるなら、SHIPPSYSがお役に立ちます

SHIPPSYSは、複数の配送会社に対応した送り状発行システムです。配送会社ごとの発行作業をまとめ、受注データとの連携を通じて、転記や繰り返しの操作を減らす運用を支えます。

ネクストエンジンをご利用の場合は、連携アプリの「完全自動版」で受注データの取得、送り状の生成・印刷、追跡番号や出荷結果の反映までを自動化できます。事前の連携・ルール設定が必要で、自動印刷には印刷PCとSHIPPSYS Printの稼働が必要です。

まずは、現在お使いの受注管理システム・配送会社・プリンターと、1日のおおよその出荷件数をお聞かせください。対応できる連携方法や運用条件を確認し、どの作業から見直せるかをご案内します。

「今の出荷作業で、どこを減らせるだろう?」という段階からご相談いただけます。

出荷作業の見直しを相談する ネクストエンジン連携を見る

参考資料

制度・指定基準の確認日:2026年10月30日。以下の公式資料を参照しています。手続きの詳細・期限は区分別の最新の手引きで確認してください。

機能・コラム一覧へ戻る

CONTACT

毎日の転記・送り状発行を見直しませんか?

SHIPPSYSでどの作業を減らせるか、現在の出荷手順をもとにご案内します。